抄録
ラドンおよびその娘核種による被曝が自然放射線被曝のほぼ半分をしめ, しかもラドンが自然放射性元素の中では人体に最も大きな影響を及ぼしているとして最近問題となってきた. このため世界的にラドンに対する関心が高まり, 日本でも放射線医学総合研究所が中心になって全国の屋内ラドン濃度調査が行われた. 著者らも九州地方の測定を分担したのでその結果を報告する. 測定器はポリカーボネート・フィルムを用いた簡易パッシブモニターを使用した. 福岡県と鹿児島県を測定した結果, 両県全体で算術平均で24.4Bq/m³, 標準偏差13.1Bq/m³, 幾何平均22,2Bq/m³, 中央値20.7Bq/m³だった. 季節変化を幾何平均で比較すると夏期19.3Bq/m³, 冬期24.7Bq/m³と夏期より冬期に高く, 家屋構造別比較ではコンクリート構造, あるいは土壁のある木造住宅が高値を示した. 県別の比較をすると鹿児島県より福岡県の方が高値を示した. これらの結果は, 屋内ラドン濃度が季節, 住宅構造, 地域等に影響されることを示唆している.