Journal of UOEH
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「毒」と神経
―アクリルアミド中毒,巨大軸索ニューロパチー,Krabbe病の病態生理をめぐる一考察―
伊規須 英輝
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1992 年 14 巻 2 号 p. 185-192

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抄録
「アクリルアミド中毒」と「巨大軸索ニュ一ロパチー」には, 次の共通点がある. (1)末梢神経および中枢神経が障害される. (2)ニューロフィラメントの増加(凝集)を伴う軸索末端の腫大がみられる. (3)アクリルアミドを正常培養細胞に作用させると中間フィラメントの凝集が起こるが, 同様の変化が巨大軸索ニューロパチー患者の細胞にみられる, 従って, 両疾患では共通の病態発生機構が働いている可能性がある. ただ, アクリルアミド中毒は外因性であり, 巨大軸索ニューロパチーは内因性疾患である. しかし, これらは, 巨大軸索ニューロパチーにおける内因性のアクリルアミド(様物質)の処理障害を仮定すると一応の説明がつく. 一方, 遺伝性神経疾患であるKrabbe病の重篤な神経障害は, 内因性の「毒」性の高い脂質一サイコシンーの作用で説明し得る. これらのことは, 「中毒学的アプローチ」が, 通常考えられている以上に, 広範な疾患の病態解明においても有効であり得る可能性を示唆している.
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© 1992 産業医科大学
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