抄録
トルイジンによる膀胱癌発症が知られている.一方メトヘモグロビン(Met-Hb)血症は稀な疾患であり,トルイジンによるMet-Hb血症の認知度は低い.今回我々は,トルイジン曝露によるMet-Hb血症の1例を経験したので報告する.症例は50歳代男性.トルイジン溶液運搬中に溶液がこぼれ,衣服に付着したが,着替えや除染を行わず2時間かけて職場に運転して戻った.職場に戻ったところ呼吸困難が出現し,救急要請し,前医へ搬送された.著明なチアノーゼを認め, Met-Hb 44%と高値であったため,トルイジン曝露によるMet-Hb血症と診断された.加療目的に当院へ転院,集中治療室に入室となった.集中治療室入室後Met-Hb血症の治療が開始され,Met-Hb値は正常化し,症状も改善した.本症例のようなトルイジンを取り扱う労働者のチアノーゼや呼吸困難では,Met-Hb血症を考慮すべきである.