抄録
フェナンスリジン化合物の変異原性とその化学構造の関係について, 細菌と酵母を用いて検討した. 3位と8位にアミン基を持つ化合物ではSalmonella typhimurium TA98株にフレームシフトタイプの変異を高率に起こした. これに対し3位あるいは8位のアミノ基の除去, またはアザイト基のアミン基との置換によって変異原性は低下した. 酵母ミトコンドリアの変異原性試験において, 双方にアミノ基を持つものは増殖細胞, 静止細胞共に高率な変異を誘発したが, いずれかあるいは双方のアミノ基の除去によって静止細胞での変異誘発能は全く失われ, 増殖細胞にのみ変異活性を示した. また各々の化合物のアザイド置換体の変異誘発能は増殖, 静止細胞ともに著しく低下し, 殆ど活性を示さなかった.