2010 年 63 巻 12 号 p. 945-949
フトアゴヒゲトカゲ(Pogona vitticeps)3匹に胃カルチノイドを認めた. 症例はすべて成体の雌で,いずれも肉眼的に胃に大型・貫壁性の腫瘍が観察され,症例3は肝転移を伴っていた. 組織学的に,腫瘍組織は被膜を持たず胞巣状~リボン状構造を作って浸潤性に増殖しており,症例2に偽花冠状配列もみられた. これらの腫瘍細胞は接着性に乏しく,狭小な細胞質と小型,濃染性,類円形の核をもつ細胞や,大型・明調でやや紡錘形の核を有する細胞が認められた. 免疫染色で,全例の腫瘍細胞にクロモグラニンAとシナプトフィジンの存在が証明され,症例1のみサイトケラチンの発現がみられた. さらに,電子顕微鏡学的に,症例3の腫瘍細胞細胞質内に平均直径220nmの神経内分泌顆粒を観察した.