抄録
63カ月齢,雌,ホルスタイン牛のと畜検査時に肺や複数の体腔内リンパ節に白色腫瘤を認めた.腫瘤の押捺細胞診により,数個の大型核が密に配置する多核巨細胞を伴う悪性間葉系腫瘍と診断された.病理組織学的には,小型円形の腫瘍細胞の増殖を主体とし,横紋筋芽細胞や筋管様細胞が混在した胎児型横紋筋肉腫と診断された.免疫染色にて,腫瘍細胞はvimentin及びdesmin陽性で,小型円形腫瘍細胞はMyoD1陽性,横紋筋分化を呈する腫瘍細胞はmyogeninが陽性を示した.本例はまれな牛の胎児型横紋筋肉腫であり,押捺細胞診において筋管様腫瘍細胞に相当する多核巨細胞が検出され,病理組織学的特徴が細胞診標本に反映されていた.