2020 年 73 巻 2 号 p. 96-100
子牛の臍帯炎は出生時あるいは出生直後の臍帯感染に起因し,全身感染につながる重要な疾患である.導入した9頭の2カ月齢子牛のうち,2頭において潜在性臍静脈炎がみられたので,概要を報告する.症例1は,導入時より左手根関節が腫脹していた.症例2に,外貌の異常はみられなかった.病理解剖では症例1,2ともに臍静脈が直径2から3cmに拡大し,内腔に膿が貯留していた.症例1では肝左葉を中心に直径3cm以下の膿瘍が密発し,右肩部皮下及び大脳頭頂葉にも単在していた.一方,症例2では肝左葉の高度萎縮及び三つ組における細動脈の過形成が観察された.免疫組織化学的検査では,2症例の臍静脈にTrueperella pyogenes 抗原が検出された.症例1は臍帯炎由来の敗血症であり,症例2は線維化により拡大した臍静脈による肝内門脈の圧迫で生じた血行障害に起因する左葉の高度萎縮と考えられた.