黒毛和種繁殖牛で認められた腸炎型リステリア症

抄録

黒毛和種繁殖雌牛2頭が発熱，食欲廃絶及び水様性下痢を呈し，うち1頭が偽膜様物を排泄後，起立不能となり死亡した．剖検所見では空腸から直腸粘膜の肥厚及び出血，腸間膜リンパ節の腫大が認められ，細菌学的検査では，主要臓器，腸間膜リンパ節及び腸内容物からListeria monocytogenes （血清型4b）が分離された．病理組織学的検査で，重度の単核細胞浸潤及びリンパ管炎を伴う壊死性腸炎が認められ，免疫組織化学的染色によりマクロファージの細胞質内及び細菌様構造物に一致してL. monocytogenes（血清型4b）陽性抗原が多数確認された．以上から，本症例はL. monocytogenes（血清型4b）による壊死性腸炎と診断されたまれな症例であると考えられた．