1991 年 53 巻 1 号 p. 107-112
難治性で大きな血腫が発生した黒毛和種牛 (血腫牛) において, in vitroの検査で血小板のコラーゲン凝集能の低下が認められた. PT (プロトロンビン時間) およびPTT (部分トロンボプラスチン時間) による外因性および内因性凝固に関する検査の結果は, 対照群と統計的有意差は認められなかった. コラーゲン以外の血小板凝集惹起物質であるADP, セロトニン (5-HT), トロンビン, アラキドン酸, エピネフリン, リストセチンによる凝集は, 血腫牛において対照牛と同様なパターンを示した. 血小板のコラーゲンで惹起した放出能には低下が認められた. 血小板の凝集能および放出能の低下は, 本疾患がストレージプール病 (貯蔵プール欠乏症) であることを示唆していた. この血小板機能不全が, 本疾患における難治性で大きな血腫の主要な原因と推測された. 血小板機能の低下している血腫牛の全例において, 末梢血の好酸球に含まれる好酸性顆粒は, 数が少なく, 大型であった. 好酸球の大顆粒は, 通常の好酸球顆粒と同様にペルオキシダーゼ陽性でPAS染色陰性であった.