抄録
人直腸癌由来のHRT-18細胞を用い, 下痢を示した180頭の子牛と臨床的に健康な同居子牛36頭についてウイルス学的検査を実施した. その結果, 下痢子牛のうち5頭の下痢便と56頭の鼻汁から, また同居子牛10頭の鼻汁から細胞病原性のウイルスが分離された. 下痢便からウイルスが分離された5頭は, 鼻汁からのウイルス分離も陽性であった. 分離ウイルスはコロナウイルスに特徴的な形態を示し, マウス赤血球を凝集し, またネブラスカ子牛下痢コロナウイルスと血清学的に同一であったことから, 牛コロナウイルスと同定した. 蛍光抗体法による鼻粘膜上皮細胞中のウイルス抗原の検出結果は, HRT-18細胞を用いた鼻汁からのウイルス分離成績とよく一致した. 本報告は新生子牛下痢便からの牛コロナウイルス分離に関する我が国での最初の症例であり, また鼻汁から高率にウイルスが分離された事実は牛コロナウイルス感染症の病態発生の上から興味深い.