Journal of Veterinary Medical Science
Online ISSN : 1347-7439
Print ISSN : 0916-7250
ISSN-L : 0916-7250
豚精巣の微細構造:頭帽形成不全(Acrosomic Fragmentation and Vacuolization)を示す異常精子細胞
小島 義夫
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 53 巻 4 号 p. 593-600

詳細
抄録

繁殖に供用されていた品種の異なる4頭の種雄豚の精巣中に, 分断化と空胞化を伴ったacrosomeを持つ精子細胞が検出された. これらの豚は夫々, 以下の理由で9月から10月中に処分された. Hampshireは繁殖計画から他品種との交換のため廃用. Landraceは精液性状不良となり(hair pin精子が多発)不妊を呈したもの. Durocは夏季不妊症を呈し, 後に起立不能となったもの(死後, 仙骨骨折と判明:精巣上体中に屈折したhair pin精子が存在). Yorkshireは精液性状が劣化し夏季不妊症と診断された.材料は何れも放血前に速やかに精巣を切り出し, 型の如く固定, 包埋して電顕で観察した. acrosome capの分断像は精子細胞の頭帽期にみられた. 不均一な核質をもつほぼ円形の細胞核は濃縮過程にあり, 中心体由来の尾部は伸展し核の基底部ヘ向かって移動中(早期頭帽期), あるいは基底部に附着していて(後期頭帽期), 何れもaxonemal complexの構成に異常は認められなかった. しかし, 形成過程にある頭帽は, 電子密度の高い先体顆粒を含む嚢胞を1つ持つものの, 正常細胞で一連のべルジャー形, あるいはドングリの笠形となるべき頭帽の辺縁部は寸断されて, 切片でみる限りでは, 数個から十数個の小嚢胞となって核膜に附着していた. 細胞核は本来球状体であることから推して, 小嚢胸の数は数十個にも及ぶことが考察される. 先体の分断化に対応して小嚢胞の附着部分は, 核膜に添って核濃縮の像が認められた. この異常の他に, 正常の伸展をみせた頭帽の内部に, 空胞または液胞を持つものが多数見出された. さらに又, 次の先体期の精子細胞にも, アクロゾーム内に空胞を持つものが多く出現し, 空胞の出現部位は頭部先端部と頭帽の下端部(赤道帯を形成する部分)に多発した. これらの先体の分断化と空胞化は, 細胞間橋によって連結している姉妹細胞間にも出現した. これらの変化は, 精子完成途上の細胞をとり巻くセルトリー細胞の細胞質が希薄化し, 崩壊しつつある像を示していること等から, 精子細胞への栄養供給が何らかの理由で障害された為, 発生したものであろうと推測される.

著者関連情報
© 社団法人 日本獣医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top