性成熟に達した雄シバヤギ精巣の精細胞における各種レクチンの結合性を光顕および電顕により検討した. Dolichos biflorus agglutinin(DBA)およびGriffonia simplicifolia agglutinin-I(GS-I)は精上皮に全く反応性を示さなかったが, soybean(Glycine max) agglutinin(SBA), Griffonia simplicifolia agglutinin-II(GS-II)およびpeanut(Arachis hypogaea) agglutinin(PNA)はいずれも精細胞に反応した. SBA反応は精子細胞の尖体部のみに認められたのに対し, GS-II反応は尖体部のほか, 尖体期お上び成熟期の精子細胞の核後方部ならびに遺残細胞質中にも認められた. また, PNAは精子細胞の尖体部のほか, パキテン後期の精母細胞から成熟期の精子細胞までの細胞質および細胞膜に反応したことから, この時期の精細胞内にD-ガラクトースを含む糖鎖構造の出現が示唆された. したがって, PNAは分化中の精細胞の有用なマーカーとなる可能性が考えられた.