抄録
Theileria sergenti 感染牛で貧血に付随して血漿脂質組成に変化が認められた. コレステロール, 遊離コレステロール, リン脂質, 高比重リポ蛋白コレステロール, およびビタミンEの各血漿濃度は感染にともなうPCV値の減少に一致して減少し, 感染前の値の40-67%低下した. しかし血漿トリグリセライド値には顕著な変化はなかった. 密度勾配遠沈の結果, トリグリセライドを除くこれらの脂質成分は同一のリポ蛋白, 即ち高比重リポ蛋白に含まれること, またこの高比重リポ蛋白の減少がこれら脂質の減少の原因であることが確認された. 高比重リポ蛋白の減少と肝機能の間には関係がなかった. 脂質成分の同様の変化が〓血牛においても認められたことから, この現象がT.sergenti感染による貧血への反応として, 造血機能が亢進したことに関係があるものと考えられた.