抄録
マウスにおける20-Methylcholanthrene (MC)誘発腫瘍の第2代継代細胞を用いてトキソプラズマ溶解抗原(TLA)の治療効果について検討した. 腫瘍移植後7日目にTLAを筋肉内投与すると14日目には腫瘍増殖の抑制が認められ, TLA再投与によりその効果は増強された. また, 担癌マウスにTLA感作マウス脾臓細胞を静脈内移入しても腫瘍増殖抑制効果が認められ, この効果はTLA感作5日目の脾臓細胞を移入された群で明瞭であった. さらに, この効果はTLA感作マウス脾臓内付着性細胞あるいは非付着性細胞のいずれか一方のみを移入した群では認められず, 両方の細胞を同時に移入した群で最も明瞭に観察された. 同様に in vitroにおいて, TLA感作マウス脾臓細胞をTLA添加培養すると, P-815およびYAC- 1細胞に対する細胞障害性が認められた. TLA感作マウスの脾臓内付着性細胞と非付着性細胞を共に培養することによってのみ, 細胞内顆粒に富んだ大型の非付着性細胞が誘導された. 以上のことから, TLAは脾臓内付着性および非付着性細胞を活性化することによって, 化学発癌による可移植性腫瘍の増殖を抑制し得ることが明らかとなった.