抄録
脱嚢日本産幼肝蛭をウサギ, マウス, ラットおよびニワトリの結紫腸管に注入し, 腸管を培養して幼肝蛭の腸管壁突破を調べた. ウサギ腸管各部位における腸管突破率は直腸, 十二指腸で比較的高率であり, 回腸, 空腸, 盲腸, 結腸はこれに次いだが, 相互にそれほど大きな差異はなかった. 虫垂では若干低率であった. マウス腸管では, 空腸, 直腸において高率であったが, 十二指腸, 盲腸においてもほほ同様に高率であった. ラット腸管では, 空腸では比較的高い突破率であったが, 十二指腸と直腸では低率であった. ニワトリ腸管では十二指腸, 空腸, 直腸のいずれにおいても突破率は極めて低かった. 結局, ウサギおよびマウスでは脱嚢した幼肝蛭は宿主腸管のいずれの部位においても突破可能であり, ラットでは空腸を含む小腸中間部が突破好適部位と考えられた. また, ニワトりが肝蛭に容易に感染しない要因のひとつとして, 幼肝蛭の腸管突破率の低いことが推察された.