過去10年間に剖検された成牛692例中9例(1.3%)に播種性真菌症が認められた. これら9例は, 深在性真菌症(45/692例)の20.0%(9/45例)に相当していた. 播種性病巣は, 肺(3例), 心臓(2例), 肝臓(2例), 脾臓(1例), 腎臓(1例), 中枢神経系(1例)およびリンパ節(1例)に見られた. 病理組織学的には, 好中球の反応を伴う接合菌網の菌糸による肉芽腫性病巣, 壊死巣(梗塞を含む)および血栓性血管炎が見られ, ムコール症と診断された. 肝臓では, アステロイド・ボディを伴う肉芽腫性病巣が見られた. ムコール症の原発病巣は, 舌(1例), 第一胃もしくは第四胃(4例), 子宮(1例)に認められた. これら以外の3例では, 原発巣は明らかではなかった. 消化器系ムコール症の4例は, 呼吸器系アスペルギルス症との重複感染症であった. 検索した9例全ては様々な先駆疾患を伴っており, 6例は種々の長期にわたる消耗性疾患を有していた.