Journal of Veterinary Medical Science
Online ISSN : 1347-7439
Print ISSN : 0916-7250
ISSN-L : 0916-7250
鶏の病原性大腸菌に見られた酸により誘発される自家凝集性
関崎 勉中里 ユミ野々村 勲
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 54 巻 3 号 p. 493-499

詳細
抄録

鶏の病原性大腸菌にトリプチケースソイブロス(TSB)での静置培養で, 自家凝集が見られた. そのうち1株(PDI-386 )について, その自家凝集性について, さらに検討した. 培養液中のブドウ糖の分解による酸が, 自家凝集を誘発した. ブドウ糖を含まないLブロスで培養した菌は, 培養後に酸を加えることによって自家凝集し, 潜在的に自家凝集能を有することが分かった. 自家凝集性を有する親株(Agg)は, TSB寒天上でラフ型に似た辺縁不整な小集落を形成したが, これより派生した非凝集variant(Nag)は, スムーズ型の正円な大集落を形成した. TSB寒天上でNag集落はAgg集落から容易に出現した. TSB中での継代では, 自家凝集性は非常に不安定だったが, Lブロス中では安定に継代された. 電子顕微鏡下で, Agg菌には, 20μm以上の長い線毛が観察された. しかし, 自家凝集性の発現は, モルモットの血液を用いたマンノース感受性赤血球凝集反応と一致しなかった. Nag菌をLブロスで室温10日以上培養すると, 自家凝集性の回復が見られた. Agg菌とNag菌の間で, 菌表面の疎水性度, 膜蛋白とLPSのSDS -ポリアクリルアミド電気泳動像およびプラスミドプロファイルに差は無かった. Agg菌はNag菌よりも病原性が強かった. 本報告の自家凝集性は, 試験管内で不安定であり, 鶏に対する大腸菌の病原性を評価するときに, 注意すべき性状であると思われる.

著者関連情報
© 社団法人 日本獣医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top