抄録
ネコの胆汁中より, 硫安塩析法, ゲル濾過法, アフィニティークロマトグラフィー法によりIgAを精製した. このIgAは抗猫全血清及び抗猫胆汁血清との間に, 免疫電気泳動法並びにdouble diffusion法により一本の沈降線を認め, 単一成分であることが確認できた. さらに, この胆汁中IgAはSDS-PAGEで分析すると分子量80kd, 62kd, 27kdのサブユニットからなり, ヒトや他の動物で報告されている分泌因子(secretory component)に相当する80 kdの成分を持っていた. 次に胆汁中IgAの動態を明らかにする目的で, 成長期猫の胆汁をカテーテル法により継続的に採取し, 免疫グロブリン濃度を測定した. この結果胎児期の胆汁中には免疫グロブリンはほとんど存在せず, 出生後にIgG, IgAならびにIgMとも徐々に増加するが, IgAやIgMはIgGよりも比較的早い段階で成猫値に達する傾向が認められた. とくにIgAは血清中よりも早く発達することが窺われた.