抄録
本研究は, 視床下部正中隆起弓状核(ARC)の電気刺激によって誘発される内側視索前野(POA)ニューロンにおけるantidromic (AD)およびorthodromic(OD)反応の閾値に及ぼす性周期, 卵巣摘出後エストロゲン(estradiol)およびプロゲステロン投与(Ovx-P)の影響について試験した. single unitの誘導は, 細胞外記録法によった. その結果, POAニューロンにおけるADおよびOD反応の閾値は, 卵巣摘出後エストロゲン投与(Ovx-E), estrusおよびproestrusで低下し, Ovx-Pおよびdiestrusで増加した. 抑制性ODニューロンの数は, proestrusおよびOvx-Eで増加し, diestrusで減少した. 興奮性ODニューロンの数は, Ovx-Pおよびdiestrusで増加した. 抑制性および興奮性OD反応の閾値は, Ovx-E, proestrusおよびestrusで低下し, Ovx-Pで上昇した. 以上の成績からエストロゲンは, ARCニューロンの軸索側副枝を介して抑制性シナプス入力を受けるPOAのニューロンを, プロゲステロンは, 興奮性シナプス入力を受けるPOAのニューロンをそれぞれ賦活することが示された.