抄録
ゴールデン・ハムスターの嗅上皮および鋤鼻器における種々の酵素活性を組織化学的に検索した. アデノシントリホスファターゼ, 乳酸脱水素酵素およびコハク酸脱水素酵素は, 嗅上皮, 鋤鼻器感覚上皮および鋤鼻器呼吸上皮に強い活性を示した. また酸性ホスファターゼは嗅上皮と鋤鼻器感覚上皮の両者に強い活性を示したのに対し, 非特異的エステラーゼは鋤鼻器感覚上皮のみに強い活性を示した. 一方, アルカリ性ホスファターゼは鋤鼻器呼吸上皮のみに活性を示した. モノアミン酸化酵素とアセチルコリンエステラーゼは上記のいずれの上皮にも活性を示さなかった. 以上より, 嗅上皮と鋤鼻器感覚上皮における各種酵素活性の類似と相違はこれらの上皮における共通の嗅覚機能又は特殊化を反映している可能性が考えられた. 一方, 鋤鼻器呼吸上皮における各種酵素活性が前2者と異なることは, この上皮が非嗅覚性の上皮であることに起因する可能性が推測された.