Journal of Veterinary Medical Science
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野生及び飼育ニホンカモシカにおける薬剤耐性大腸菌の検査
金城 俊夫源 宣之杉山 誠杉山 芳宏
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1992 年 54 巻 5 号 p. 821-827

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抄録

山岳地域に生息する野生及び捕獲後, 人の居住地周辺で飼育されているニホンカモシカの糞便由来大腸菌を対象に薬剤耐性菌及びRプラスミド保有(R+)菌の検査を行った. 1980年度捕殺した283頭の野生ニホンカモシカから分離した大腸菌874株のうち, 使用した6剤(Ap, Sm, Tc, Cp, Km及びSu)の何れかに耐性を示した株は僅か11株(1.3%)であった. また, 耐性菌排泄個体も7頭(2.5%)のみであった. 耐性菌の検出率を高めるため, 1983年度においては, 予め薬剤を添加した培地に直接糞を培養する方法を採用したが, 耐性菌排泄個体は244頭中12頭(4.9%)だけで, 低率であった. 野生ニホンカモシカから分離した耐性大腸菌87株にはR+菌は全く検出できなかった. 一方, 飼育ニホンカモシカの場合, 耐性菌は飼育1日目の1頭からは検出できなかったが, 5日目の個体を含む32頭すべてから分離され, R+菌も20頭(61.6%)から確認された. また, 161株の耐性菌中50株(31.1%)がR+菌であった. 野生ニホンカモシカは人の生活環境で飼育されると, 抗菌剤との直接接触がなくても, 容易に耐性菌を獲得するようになる. これらの成績をもとに, 野生動物の薬剤耐性大腸菌が, その生息環境の人の生活活動による汚染の微生物指標として利用しうることを考察した.

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