抄録
等張Percoll連続密度勾配遠心法(密度範囲1.006-1.123g/ml)により分画した肺胞マクロファージ亜集団の分布と表面Ia抗原表出に及ぼすin vivoでのアスベスト暴露の影響をラットの吸入モデルを用いて調べた. 2群のラットには間欠的に(1日6時間, 週5日, 計4週間) amphibole (クロシドライト)ないしserpentine (クリソタイル)アスベストを, 対照群のラットには清浄空気のみを吸入させた. 3群のラットからの肺胞マクロファージの回収は気管支肺胞洗浄により行った. アスベスト暴露期間中の7日以内に明らかな差異が現れ, クロシドライト暴露群では, これらの変化は暴露終了後, 2ないし5ヶ月まで持続していた. 更に, 比較的多量のIa抗原陽性細胞がアスベスト暴露両群(特にクロシドライト暴露群)のいくつかの画分に検出された. また, 多核肺胞マクロファージがしばしば両タイプのアスベスト暴露群のすべての画分に現れた. これらの画分にみられた多核肺胞マクロファージの大部分は表面Ia抗原陽性を示した. アスベスト暴露ラットの気管支肺胞洗浄細胞の亜集団中に高密度の食細胞が多く見られたことは, 肺胞内のアスベスト沈着部位に新たに動員された未成熟の単球とマクロファージないしはいずれかの存在を反映しているのであろう. そしてIa抗原陽性細胞の増加はそれらの一部が活性化されていることを示している.