Journal of Veterinary Medical Science
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妊娠-投乳期間における雌ビーグル犬の骨組織形態計測学的変化
福田 俊飯田 冶三
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1993 年 55 巻 4 号 p. 565-569

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抄録

雌ビーグル犬の妊娠および授乳期間における骨代謝の変化を骨形態計測法および骨に関連した血清成分の測定によって検索した. 1歳8ヶ月齢から4歳7ヶ月齢までの繰り返し観察した1例を含む延べ8頭を用いた. 骨の動的指標を得る骨2重標識のために, 交配直後, 分娩直後, 離乳直前に塩酸テトラサイクリンまたはカルセインのような蛍光色素を全頭に7日間隔でそれぞれ2回ずつ投与し, 離乳時に腸骨を生検した. 腸骨の非脱灰骨組織標本の骨梁骨エリアの形態計測学的分析を半自動画像解析装置を用いて行った. 骨に関連した血清生化学的指標の副甲状腺ホルモン, カルシトニン, カルシウム, リン, アルカリフォスファターゼ活性値の測定を経時的に行った. 骨形態計測の結果, 同年齢の非妊娠犬の値に比べて類骨および石灰化速度は有意に高かった. 経時的に測定した石灰化速度は交配時に比べて授乳後に増加し, 分娩前にはさらに増加していた. 単位骨量, 平均骨梁幅, 骨形成率, 石灰化ずれ時間値には有意な差が認められなかった. 組織学的所見では, 妊娠後期から授乳期間に蓄積した類骨がみられた. 全骨形態計測値と母犬の年齢や仔犬の数に有意な相関が認められた. 血清成分値の変化は認められなかった. 以上の結果, 犬では骨ミネラルの減少は妊娠後期から授乳期間の骨代謝のhigh turnoverによって起こり, そして胎仔の石灰化や泌乳だけでなく母犬の年齢や仔犬の数に関与することが示唆された.

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