抄録
Rickettsia tsutsugamushi Gilliam株の型特異的抗原蛋白の遺伝子配列に基づいて作成したプライマーを用いた2段階PCR(nested PCR)法の恙虫病診断への応用の可否を検討した. その結果, このPCR法により血清型を異にするGilliam, Karp, Kato, Kawasaki, KurokiおよびShimokoshi株のいずれからもリケッチアに特異的なDNAが増幅されることを確認した. また, これらの増幅産物を制限酵素であるHha IおよびSfa NIにより切断した時のパターンは6株間で特有の差異を示すことを確認した. そこで, この方法により患者血液および流行地由来ツツガムシ中からリケッチアDNAの検出を試みたところ, リケッチアに特異的なDNAの増幅が認められ, 且つ, その増幅されたDNAの制限酵素による切断パターンから推定されるリケッチアの血清型は, 血清学的に調べた感染リケッチアの血清型と一致することが判明した. 即ち, 今回用いたPCR法は患者血液を材料とした恙虫病診断に応用できるだけでなく, これら患者およびツツガムシ中のR. tsutsugamushiの血清型別も可能な, 高感度で特異的な方法であることが示唆された.