抄録
飽血直前のフタトゲチマダニの若ダニ腸管内におけるTheileria sergentiの初期発育形態を観察した. 光顕的観察によると若ダニ腸管内の虫体にはspherical intra-erythrocytic stage, ring-form stage, round-form stage, そして極めて稀にspindle-shaped stageが認められた. 電顕的観察では, 赤血球より若ダニ腸管内に遊出した虫体は, 約1.1×1.4μmの楕円形で, 偏在した核, 小胞体, ミトコンドリア様器官, および周囲を2層の膜により囲まれた高電子密度の器官を有していた. 同時期の若ダニ腸管内には1~3本のマイクロチューブを内包した小突起を有する虫体も観察され, このような虫体では高電子密度で非常に明僚なlabyrinthine構造が見られた. 同構造は他のTheileria種のmicrogamontにも認められていることから, 本虫体はT. sergentiにおけるmicrogamontへの発育過程であると考えられた.