抄録
レニン・アンギオテンシン系は, 哺乳類において血圧や電解質のバランス維持に重要な役割を果たしている. 酵素レニンはその主要産生組織である腎臓の他に, 脳, 脳下垂体, 卵巣, 子宮, 精巣, 胎盤, 心臓, 副腎や顎下腺での発現が分子生物学的手法で確かめられてきた. またレニン遺伝子の発現制御の研究は, 胎盤や顎下腺において展開されてきたが, 肝臓に関してはほとんど解析が進んでいなかった. そこで本研究は, レニン遺伝子の肝臓における発現調節のメカニズムを明らかにする第一歩として, RNaseプロテクション法を用いたmRNAの蓄積レベルとDNAのトランスフェクションを用いたプロモーター解析法の一つであるCATアッセイでレニン遺伝子の種特異的な発現を比較検討した. その結果, レニンmRNAはラットの肝臓だけでその蓄積が同定され, マウスやヒトの肝臓では確認されなかった. またCATアッセイの結果, トランスフェクションした肝癌由来の細胞株であるHepG2においてラットのレニンプロモーターだけがCAT遺伝子発現を誘導したが, マウスやヒトのレニンプロモーターは機能しなかった. これらの結果は, 肝臓におけるレニン遺伝子の種特異的な発現がプロモーターの特異性に依存していることを示唆している.