処女, 妊娠, 泌乳および離乳期のマウス乳腺の毛細血管内皮細胞における透過性がどのように変化するのかを知る目的で, フェリチンをトレーサーとして, 透過電顕ならびに形態計測を用いて検索した. 処女期では投与後1~5分に飲小胞および被覆小胞内に, 10分後に血管周囲腔に粒子がみられた. また, いずれの時間においても内皮細胞間の接合部に粒子は認められなかった. 妊娠10日目では5分後に, 妊娠18日目では3分後に血管周囲腔に粒子がみられた. 泌乳5および10日目では, 1分後にはすでに血管周囲腔に多数の粒子がみられ, さらに腺胞上皮細胞の基底陥入内に取り込まれているものもみられた. しかし, 泌乳20日目になると, フェリチンで標識された小胞数は急激に減少した. 離乳期のフェリチンの透過性は処女期と類似していた. 以上の観察から乳腺の毛細血管は泌乳初期から中期にかけて飲小胞による透過性を著しく増大していることが示唆された.