抄録
犬の大腿骨遠位端外側顆にSalter-Harris 4型骨折を実験的に作製し, これを生体内分解・吸収性高分子である延伸poly-L-lactide(PLLA)製スクリューを用いてラグ固定を行い, その骨折治癒過程を観察し, その有用性を評価した. 処置後1~2カ月の時点で, 放射線学的および組織学的に, 骨折部の骨癒合が認められた. 処置後4カ月および6カ月の時点においては, 組織学的にPLLA自体の表層部に微細な亀裂が認められ, 分解・吸収過程の初期段階が認められ, さらにスクリュー周囲の炎症性細胞の浸潤は経時的に減少した. また観察期間中, 全実験動物について骨折部の癒合不全, あるいは大腿骨の成長障害などの異常所見は認められなかった. これらの所見を総括すると, 延伸PLLAスクリューは, 今回作製した実験的骨折において, 骨癒合が完了するまで骨折片を固定・維持しており, さらに骨癒合終了後には分解・吸収されるという骨端成長板骨折の整復・固定には理想的なインプラントの性質を有していると考えられた.