1994 年 56 巻 5 号 p. 835-840
アオダイショウにおける精子発生の季節変化と精子細胞の超微形態変化を光学顕微鏡及び電子顕微鏡にて観察した. アオダイショウの精子発生は8月に始まり, 10月まで確認されたが, 他の時期には精細管内に精子は認められなかった. アオダイショウは交尾を5月から6月にかけて行うことが知られており, 本研究の結果から精子発生を交尾期後に行うことが明らかとなった. これはGironsの分類によれば, postnuptial typeに相当する. アオダイショウの精子発生過程における精子細胞の形態変化は, 基本的に哺乳類と類似していたが, いくつかの点で異なった特徴を示した. 最も特徴的な点は, 脂肪滴様構造の存在である. この構造は初期の円形精子細胞で初めて出現し, 精子細胞の成長とともに徐々にその大きさと数を増す. そして成熟精子細胞では, その核周囲に規則正しく配列する像が認められた. 精上皮から精子として離脱する精子細胞にはこの構造が認められたにもかかわらず, 輸精管内貯蔵精子には, 観察されなかった. 精子から離れた脂肪滴様構造は,輸精管全体に分布していた. また, 成熟精子細胞におけるミトコンドリアは極めて長く伸長していた.