1994 年 56 巻 5 号 p. 883-886
Long-Evans Cinnamon(LEC)ラットは血清IgG1レベルが異常に少ないことが報告されている. この基礎IgG1レベルを決定する表現型は試験的にImmunoglobulin sub-class regulator-1 (Igsr-1)と命名され, 正常ラットはIgsr-1A型(正常レベルIgG1発現型)に, LECラットはIgsr-1B型(低レベルIgG1発現型)に分類された. 今回我々はLECラットのこの表現型の遺伝様式について調べた. LECラット(Igsr-1B型)と正常ラット(Igsr-1A型)の交配から得られたF1ラットの血清IgG1レベルは両者の中間値であった. このことはIgsr-1表現型が共優性遺伝様式をとることを示唆している. 更にF1ラットをLECラットに戻し交配したラットの血清IgG1レベルは正常ラットとLECラットのレベルの間で様々な値をとり, クリアーな分離はみられなかった. このことはIgsr-1表現型が複数の遺伝子座により制御されていることを示唆している. 更に個々の戻し交配ラットの血清IgG1値はもう一つの突然変異遺伝子型, thid (T-helper immunodeficiency)とは関連していなかった. これらの結果からLECラットの血清IgG1低レベル異常はヘルパーT細胞機能の欠損とは無関係で, 何か未知の機構の複合的欠陥によるものと推察される.