抄録
犬糸状虫症犬63例において酸素の分配と消費を検討する目的で, 酸素分配量指数,酸素消費量指数および摂取率を計算した. 酸素分配量指数は, 犬糸状虫非寄生犬(n=11, 1041±264 ml/min/kg)と比較して, 軽症の肺動脈寄生犬(n=34, 770±331 ml/min/kg), 腹水症状を示す肺動脈寄生犬(n=7, 238±155ml/min/kg), 犬糸状虫摘出後に回復した caval syndrome(CS)例(n=15, 577±320ml/min/kg), 死亡したCS例(n=7, 333±263ml/min/kg)とも低値であった. 酸素消費量指数は, 軽症の肺動脈寄生例で高値を示す例があったが, 腹水症例では低値であった. 酸素摂取率は犬糸状虫寄生犬全群で高値であった. 酸素分配量指数は酸素消費量指数と有意に相関し(r=0.84), 酸素消費量指数は摂取率と有意に相関した(r=0.48). 酸素分配量指数は, 動脈血酸素分圧(r=0.33), 血清LDH活性(r=-0.46), CK活性(r=-0.46), 血清尿素窒素濃度(r =-0.32), 乳酸濃度(r=-0.39)および心指数(r=0.64)と有意に相関した. 酸素分配量指数は, 血清LDH活性(r=-0.43)とCK(r=-0.41)活性, 血清尿素窒素濃度(r=-0.29), 乳酸濃度(r=-0.37), 心指数(r=0.53)および体重(r=-0.34)と有意に相関した. 酸素摂取率は, 混合静脈血酸素分圧(r=-0.38), 血清ALT活性(r=0.31)との相関が有意であった. 以上の所見より, 酸素の分配と消費が, 犬糸状虫症の病態と密接に関係することが明らかとなった.