抄録
ネコ白血病ウイルス(FeLV)感染症における赤白血病の発生は比較的まれであるが, ネコの多頭飼育家庭において赤白血病がFeLV自然感染ネコ2例に認められた. 症例1は, 1歳齢の去勢雄ネコであり, 急性白血病のFAB分類にしたがって診断を行ったところ, 骨髄異形成症候群(MDS-Er)から赤白血病(M6)ヘ進行を示した症例と考えられた. 症例2は症例1と密接に接触のあった1歳齢の避妊雌ネコであり, 症例1に続いて赤白血病(M6Er)を発症した. 両方の症例において, 骨髄における未分化な赤血球系前駆細胞の顕著な増殖が認められた.症例1の末期には, 顆粒球系細胞の著しい腫瘍性増殖も認められた. ダウノマイシンを中心に用いた多剤併用化学療法はこれは2例の赤白血病に対して一時的に効果を示したが, 完全寛解を得ることはできなかった. FeLV特異的プローブを用いたサザンブロット解析では, これら症例で認められた腫蕩細胞がクローン性に増殖していたこと, および症例1のM6の時期にはMDS-Erの時期とは異なる腫瘍細胞クローンが増殖していたことが見出された. さらに, 症例1の腫瘍細胞には, 通常のFeLVとは制限酵素地図の異なる変異株が感染していることが認められた.