1995 年 57 巻 2 号 p. 213-218
急速輸液時の体内水分動態を検討するため, 全身麻酔下で両側腎血管紮犬およびオレイン酸投与による肺毛細血管透過性亢進モデル犬を作製して乳酸リンゲル液を90ml/kg/hrで30分間の急速輸液を行った. 熱-Na二重指示薬希釈法による肺血管外水分量, 腹水量, 尿量および各種臨床パラメーターを経時的にモニターした. その結果, イヌに急速輸液という水分力学的負荷を与えても, 過剰な水分は健康では主に尿として排泄, また腎血管結紮モデルでは腹腔内に漏出され, 肺血管外水分量は軽度上昇するものの輸液終了後は回復に向かい, 肺水腫は発現しにくいことが示された. 一方, 肺血管透過性の亢進がある場合には過剰な水分が肺において急速に漏出するために肺水腫が発現しやすいことが示された.