抄録
ネコ免疫不全ウイルス(FIV)に実験感染および自然感染したネコの末梢血単核球(PBMC)における proviral DNAのコピー数をPCR法を用いて定量した. プライマーは, TM2およびPetaluma株で比較的よく保存されている領域の塩基配列をもとにデザインした. TM1およびTM2株を実験感染させたネコにおいては, FIVに特異的なDNAがPCRにより増幅されたが, Petaluma株感染ネコからは増幅されなかった. また, 供試したすべての自然感染ネコにおいても, 同じ条件でFIVに特異的なDNAが増幅された. 今回定量した6匹のネコでのproviral DNAのコピー数は, 105PBMCあたり10<4.0>から10<5.7>であった. 今回確立した方法は, TM2型のFIVに感染したネコのPBMCにおけるproviral DNAのコピー数の定量が可能であり, また日本における野外の自然感染ネコにも応用できると思われた. proviral DNAの定量は, 生体内におけるFIVのプロウイルス量, 免疫応答, 症状の進行との関連, また, ウイルス粒子が放出されない無症状潜伏感染期における抗ウイルス治療などを評価する際のパラメーターとして役立つものと考えられる.