2012 年 68 巻 7 号 p. III_277-III_283
本研究では,干潟を代表する生物である二枚貝(イソシジミ)の生育状況に影響を与える餌料源を,炭素安定同位体,脂肪酸組成および脂肪酸中の炭素安定同位体を用いて検討した.その結果,バルクレベルの炭素安定同位体比では,餌料源として利用している大まかな種類しか明らかにならなかったが,脂肪酸組成分析を用いることで,EPAとDHAが重要であることが明らかとなった.さらに,各脂肪酸中の炭素安定同位体を分析することで,EPAとDHAの中でも陸域に由来するものが重要であることが示された.よって,餌料源を推定する方法の一つとして,脂肪酸中の安定同位体比が有用であることが示唆された.今後,生物種レベルでの餌料源解析が進められ,より良い干潟環境保全へ繋がるものと期待される.