循環血液量減少性ショック時の肝臓の酸素需給動態の変化を右心バイパス法を用いて検討した. 血液量減少性ショック時には全身の酸素供給量に占める肝酸素供給量の分配率は先人の報告通り著明に低下した. この分配率の低下原因は, 全身の酸素供給量の低下に比べて門脈血酸素供給量が著しく減少した結果であった. 門脈血酸素供給量の減少原因は門脈血酸素供給量と門脈血流量の双方が低下したことにあった. 一方, ショック時における全身の酸素供給量に占める肝動脈血酸素供給量の分配率は増加していた. ショック中の肝酸素利用率はショック前値の約2倍に増加した. この肝酸素利用率の増加はショック時の肝臓のハイポキシアに対する防御機構である可能性が示唆された. ショック状態離脱後の肝酸素供給量はショック前値にまで回復した. この原因は肝動脈血酸素供給量がショック後著明に増加した結果であった. 肝酸素利用率と肝静脈血酸素含有量との間に著明な負の相関関係が認められた. 肝静脈血酸素含有量は臨床的に測定が困難である肝酸素利用率に代わり, 肝臓の酸素需給動態の簡単かつ高精度な指標になりうると考えられた.