Journal of Veterinary Medical Science
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褐毛和種にみられた後部脊柱異常を伴う先天性無眼球症
森友 靖生古賀 脩宮本 元津田 知幸
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1995 年 57 巻 4 号 p. 693-696

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抄録
無尾や偏尾などの後部脊柱に異常を伴った10例の無眼球症が熊本県下で飼育されている褐毛和種に発生し, それらを形態学的に検索した. 異常子牛は両側性または片側性に眼球を欠如していたが, 小型の眼瞼や狭小化した眼瞼裂は認められた. 眼窩内は痕跡的な眼筋や涙腺および脂肪組織の混合物で充たされており, その中に小嚢胞状, 充実性小塊状, または小斑点状の眼球痕跡(REB)が埋没して存在していた. REBは強膜, 脈絡膜および綱膜などの眼球壁を構成する要素が不規則に配列したものであり, 綱膜はしばしば異形成像を呈し, 低形成の視神経に連なっていた. これらの形態変化は眼胞や眼杯がすでに形成されたあとで, その発生過程に障害を受けたことを示唆しており, 今回観察された眼球の異常は変性性無眼球症と考えられた. 一方, 腰椎, 仙椎, 尾椎領域にみられた楔状椎, 半椎, 椎体矢状裂などの椎体の形成異常やこれら奇形椎の椎体軸を結ぶ線の蛇行は胎生初期における脊索の障害を示唆するものと考えられた. また, 胎生学的な観点から, 眼球の器官形成期と脊索形成期における奇形発生要因に対する危険期間がほほ同一時期であったものと推察された. 今回の検索で原因を推定する証拠を得ることはできなかった.
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© 社団法人 日本獣医学会
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