抄録
野外で飼育されているイヌの嗅覚路におけるメタロチオネインの局在を明らかにする目的で免疫組織化学的研究を実施した. その結果, 嗅粘膜嗅上皮内の支持細胞の核と細胞質の両者あるいはどちらか一方にメタロチオネイン陽性所見が認められた. しかし, 呼吸上皮内にはほとんど陽性細胞は認められなかった. また, メタロチオネイン陽性所見は嗅球皮質全層におけるアストロサイトに認められ, とりわけ糸球体周囲のグリア細胞で著明であった. メタロチオネイン陽性所見の程度は若齢の個体よりも成犬で強い傾向にあった. ノーザンブロット分析により, 嗅粘膜および嗅球にメタロチオネインmRNAの発現が認められた.