Journal of Veterinary Medical Science
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イヌの前十字靭帯に断裂の素因を与える変性性変化の形態病理発生
奈良間 功増岡 桃子松浦 哲郎尾崎 清和永谷 真理子森島 隆司
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1996 年 58 巻 11 号 p. 1091-1097

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抄録

断裂の臨床症状のため獣医科病院で外科的に切除された13例, および臨床的に健康な実験用ビーグル犬22例の前十字靭帯について病理組織学的並びに免疫組織学的に検査した. 断裂例の靭帯における最も頻繁な初期段階の変化は腱組織中の線維細胞の核の腫大, 核周囲暈輪およびその後に起こる軟骨化生であり, これらの変化は臨床的に健康な若齢のビーグル犬の前十字靭帯でも頻繁に認められた. この変化を示す線維細胞には有糸分裂像の増加とKi-67陽性核の増加がみられ, これらは増殖性の性格を持つ活性化と理解された. 活性化を示す線維細胞の周囲の膠原線維束間は水腫性に疎開し, PASおよびアルシアンブルー陽性物質が集積していた. また, 軟骨化生が認められる以前の段階でS-100, PASおよびアルシアンブルー陽性物質が核周囲の暈輪内に集積した. 緻密な膠原線維束から軟骨型への細胞外基質の変化は, 腱組織の膠原線維の断裂・変性に加えて前十字靭帯断裂の一因をなしていると考えられた. 活性化した線維細胞は平行に配列した膠原線維を形成することはなく, 常に軟骨への化生を示した. 軟骨化生は特異的な病因による変化ではなく, 成熟した腱組織で活性化した線維細胞の本質的な性格によると思われた.

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