抄録
黒毛和種牛の関節軟骨病変の病因を探る目的で, 潰瘍部, 肉眼的正常部, 病変移行部, 滑膜の4部位の病理組織学的検査を行った. その結果, (1)潰瘍部では関節軟骨の変性と破壊, およびそれらに対する骨髄性結合組織による修復像が認められ, (2)正常部でも軟骨表面の亀裂や軟骨下骨組織の骨梁配列の変化が存在し, (3)病変移行部では軟骨下組織および正常軟骨からの修復像がみられた. (4)しかし滑膜には異常所見は認められず, (5)上記の所見は非炎症性変化であった. 以上のことから本疾患は, 骨軟骨症から骨関節症への移行早期であると推測された.