器官固有の形態がどのように決まるのかという問いは、生物学の中で未解決な重要課題の一つである。分子生物学の進展により形態形成関連遺伝子が多数同定されてきた一方で、細胞あるいは組織(細胞集団)レベルでの動態に関する物理過程の多くは未知のままである。その理由の一つとして、最先端の顕微鏡を用いたとしても高分解能で計測可能な組織や種は極めて限られていることが挙げられる。本稿では、器官発生過程の低分解能計測データから、特に曲面状の上皮組織の変形写像を再構成するためのベイズモデルを紹介する。モデリングの基本的な考え方を中心に説明した後、この手法をニワトリ胚における前脳初期発生過程の計測データへと応用し、手法の有効性を示す。