日本暖地畜産学会報
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原著論文(一般論文)
放牧と自給飼料を組み合わせた新しい肉用牛生産方法“草地育成・肥育技術”の可能性と肉質の特徴
中村 好徳平野 清中西 雄二神谷 充常石 英作加藤 直樹林 義朗山田 明央
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2010 年 53 巻 1 号 p. 41-49

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抄録

褐毛和種(3頭,6~7ヵ月齢,253±7 kg)と黒毛和種(6頭, 6~7ヵ月齢,230±17 kg)去勢雄牛を用いて,暖地型牧草(バヒアグラスおよびヒエ)放牧地と寒地型牧草(イタリアンライグラス)放牧地で周年放牧育成後,放牧を続けながら配合飼料無給与で自家産のコーンサイレージ(CS)を併給する肥育方法により飼養し,本生産技術における増体と肉質の特徴を明らかにした.実験期間中の増体量の相違から褐毛和種は 22~24ヶ月齢,体重751±15 kg,黒毛和種は28ヶ月齢, 613±15 kgで出荷され,全放牧期間中の日増体量は褐毛和種で1.1 kg/日,黒毛和種で0.6kg/日であった.飼料成分は黒毛和種の血液性状に顕著に影響し,夏期の増体量の鈍化は夏期牧草とCSの低蛋白質含量と低消化性繊維の増加に起因すると考えられた.牛枝肉格付評価は褐毛和種がA-2のみ,黒毛和種がB-2のみであった.胸最長筋の肉質は,褐毛和種の方が黒毛和種よりも剪断力価とコラーゲン含量が有意に高く,一方,慣行肥育の黒毛和種去勢雄牛と比べると褐毛和種および黒毛和種ともに高蛋白および低脂肪であり,加えてビタミン類とコラーゲン含量が高かった.これは放牧による生草の直接摂取による天然のビタミン類の摂取と適度な運動による筋肉中結合組織の発達促進が原因であると考えられた.

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© 2010 日本暖地畜産学会
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