日本暖地畜産学会報
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原著論文(一般論文)
ジャージー種における搾乳時の後肢動作におよぼす搾乳者の影響
伊藤 秀一後藤 和神鷹 孝至プラダン ラジブ作本 亮介岡本 智伸谷 峰人山本 直幸矢用 健一
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2012 年 55 巻 2 号 p. 143-148

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抄録
搾乳時におけるジャージー牛の後肢に関係する行動(以下,後肢動作)およぼす搾乳者と恐怖性の影響を明らかにするために,搾乳経験が豊富である大学の技術員と,搾乳経験が少ない学生による搾乳時の後肢動作を比較するとともに,恐怖性の指標としての行動テスト(逃避反応,接触,新奇物および葛藤テスト)における各行動反応との関係を調査した.スタンチョン式牛舎で飼養されているジャージー種雌6頭に対して,朝夕の搾乳作業時に行動観察を行った.搾乳前の足踏み行動の発現回数は,朝および夕の両時間において学生区(7.1±7.1回および7.9±7.5回)に比べて技術員区(3.8±4.4回および3.6±3.2回)で有意に少なかった(P<0.05).一方,搾乳中の挙げ行動は,朝および夕の両時間において技術員区(1.2±1.9回および2.9±3.4回)に比べて学生区(0.5±1.0回および0.7±1.0回)で有意に少なかった(P<0.05).また,後肢動作と恐怖性との関係については,学生区における搾乳前の蹴り行動と新奇物テストにおける新奇物への接触回数との間(ρ=-0.892),搾乳時の挙げ行動と葛藤テストにおける摂食までの潜在時間(ρ=-0.926)との間にそれぞれ有意な相関が認められた(いずれもP<0.05)が,その他の行動テストの結果との関係は認められなかった.以上より,ジャージー牛は搾乳者によって異なる後肢動作を発現することが明らかとなり,その要因として搾乳者の熟練度および新奇性の関与が示唆された.一方で,後肢動作と恐怖性との関係は明確にはならなかった.
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© 2012年 日本暖地畜産学会
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