2013 年 56 巻 1 号 p. 43-47
耐塩性の高い飼料用イネ品種を明らかにするため,塩分を含んだ土壌を用いたポット栽培試験を行 い,移植後35日間の初期生育を比較した.暖地向けの飼料用イネ普及品種の中から「ニシアオバ」,「ホシアオバ」,「タチアオバ」および「モーれつ」の4品種を用いた.供試土壌には諫早湾干拓地近郊で採取した干陸後作物未栽培地の土壌(EC 0.98 mS/cm,以後塩分土壌とする)と,対照として水田土壌(EC 0.21 mS/cm)を用いた.対照では生育障害の発生は皆無だったのに対し,塩分土壌では移植後14日目から「ニシアオバ」で生育障害が観察され,21日目には「タチアオバ」,「ホシアオバ」,「ニシアオバ」で多くの個体に生育障害が発生した.移植後35 日目には塩分土壌では「タチアオバ」では半数の個体に障害が見られ,「ホシアオバ」,「ニシアオバ」では全ての個体に障害が観察された.一方,供試した4品種の中では「モーれつ」の生育障害個体率が最も低く,0%であった.水田土壌区に対する塩分土壌区の茎葉乾物重は「モーれつ」を除く3品種では7~19%と低い水準であったのに対し,「モーれつ」では52%と他品種よりも生育量の低下が抑制された.以上の結果から,「モーれつ」は暖地向けの飼料用イネ品種の中では耐塩性が高いことが明らかになった.