日本暖地畜産学会報
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56 巻, 1 号
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総説
原著論文(一般論文)
  • 玉城 政信, 中山 貴智, 清水 法明, 波平 知之, 仲村 一郎, 赤嶺 光, Md. Amzad Hossain
    2013 年 56 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    沖縄県特産品「泡盛」の醸造時,副次的に「泡盛蒸留粕」が生産され,その泡盛蒸留粕を圧搾する と,「泡盛もろみ酢」の原料と「泡盛もろみ酢粕」が分離される.その泡盛もろみ酢粕の肉用牛子牛飼料としての可能性について検討した.本研究で用いた泡盛もろみ酢粕は可消化養分総量(TDN)が76.2%,粗タンパク質 (CP)が42.2%である.給与飼料中の濃厚飼料乾物当たり16.0%を泡盛もろみ酢粕に代替えした泡盛もろみ酢粕区と対照区で比較検討した結果,乾物摂取量,TDN摂取量に有意な差は認めず,CP摂取量は泡盛もろみ酢粕区が有意に大きな値を示した(p<0.05).このことは泡盛もろみ酢粕のCPが高いことに由来すると示唆された.試験期間中の体高,胸囲,腹囲,腰角幅増加量,1日当たり増体量(DG)および飼料要求率に両区で有意な差は認められなかった.これらのことから,泡盛もろみ酢粕は,肉用子牛の飼料として濃厚飼料の16%給与が可能であることが明らかになった.
  • 水町 進, 宮城 尚, 屋良 朝宣, 新城 健, 川本 康博
    2013 年 56 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    八重山地域・島尻マージの造成草地において,本地域の既存の基幹3草種であるギニアグラス品種 ガットン(Panicum maximum Jacq. cv. Gatton),ジャイアントスターグラス(Cynodon nlemfuensis Vanderyst)およびローズグラス品種カタンボラ(Chloris gayana Kunth cv. Katambora)を含む暖地型イネ科牧草計11草種・品種の乾物生産性を3年間比較し,栽培適草種の選定を行った.主成分分析の結果,第2主成分までの累積寄与率は91%であり,第1主成分は潜在的な乾物生産性の高さを,第2主成分は耐旱性をそれぞれ示していると解釈された.本地域における基幹草種と比較して,ブッフェルグラス品種ビオーエラ(Cenchrus ciliaris L. cv. Biloela)およびパンゴラグラス品種トランスバーラ(Digitaria decumbens cv. Transvala)は収量性や耐旱性に優れていることから,新規導入草種として有望であると考えられた.特にブッフェルグラスは耐旱性が高く,本地域への適応性が高い草種であると考えられた.
  • 加藤 直樹, 佐藤 健次, 服部 育男, 久保田 哲文, 原口 暢朗
    2013 年 56 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    耐塩性の高い飼料用イネ品種を明らかにするため,塩分を含んだ土壌を用いたポット栽培試験を行 い,移植後35日間の初期生育を比較した.暖地向けの飼料用イネ普及品種の中から「ニシアオバ」,「ホシアオバ」,「タチアオバ」および「モーれつ」の4品種を用いた.供試土壌には諫早湾干拓地近郊で採取した干陸後作物未栽培地の土壌(EC 0.98 mS/cm,以後塩分土壌とする)と,対照として水田土壌(EC 0.21 mS/cm)を用いた.対照では生育障害の発生は皆無だったのに対し,塩分土壌では移植後14日目から「ニシアオバ」で生育障害が観察され,21日目には「タチアオバ」,「ホシアオバ」,「ニシアオバ」で多くの個体に生育障害が発生した.移植後35 日目には塩分土壌では「タチアオバ」では半数の個体に障害が見られ,「ホシアオバ」,「ニシアオバ」では全ての個体に障害が観察された.一方,供試した4品種の中では「モーれつ」の生育障害個体率が最も低く,0%であった.水田土壌区に対する塩分土壌区の茎葉乾物重は「モーれつ」を除く3品種では7~19%と低い水準であったのに対し,「モーれつ」では52%と他品種よりも生育量の低下が抑制された.以上の結果から,「モーれつ」は暖地向けの飼料用イネ品種の中では耐塩性が高いことが明らかになった.
  • 高橋 俊浩, 古川 修平, 森田 哲夫, 入江 正和
    2013 年 56 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    甘藷焼酎粕をエコフィードとして有効活用するため年間を通じた成分変動を明らかにした.宮崎県内で排出された乾燥甘藷焼酎粕ケーキを月1回入手し一般成分,アミノ酸,ビタミンE,有機酸,ミネラル含量を測定した.一般成分の平均値は水分8.8%,粗蛋白質21.4%,粗脂肪3.9%,NFE47.3%,粗繊維14.0%,灰分4.7%となり変動係数は3.6~10.6 %と低かった.アミノ酸含量に大きな変動は見られずα-トコフェロール含有量は245mg/kgと多く,変動係数も9.6% と低かった.ミネラル含量も年間変動が少なかったが,原料イモの品種が異なる2月と12月試料では粗灰分とCaおよびP含量が他の月に比べて高く,クエン酸が0.06%と他の月に比べ低い値を示したが特に大きな変化ではなかった.以上より,乾燥甘藷焼酎粕ケーキは年間変動も少なく,蛋白質とNFE,ビタミンEに富む良質な飼料であることがわかった.
  • 及川 卓郎, 上本 吉伸, 小林 栄治, 鈴木 啓一
    2013 年 56 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    豚の産肉能力に効果をもつQTL遺伝子の情報を元に異なる血縁個体に遺伝子情報をもつ改良モデルを設定し、数値シミュレーションにより選抜効果を比較した。選抜指数法から世代あたりの選抜反応および単位時間あたりの選抜反応を算出した。改良対象の量的形質は、皮下脂肪外層のオレイン酸の割合とし、実験対象遺伝子はSCD遺伝子とした。世代あたりの改良量は、半きょうだいと後代の情報を組み合わせた選抜モデルがもっとも高く、次いで親の遺伝子型と表現型値の組み合わせ選抜が高かった。遺伝子型情報を利用した組み合わせ選抜の中では、選抜初期には選抜個体の遺伝子型および表現型と半きょうだいの遺伝子型と表現型の組み合わせが高かったが、4世代目以降には低下した。しかし、時間当たりの改良量をみると、世代間隔が長い後代情報を利用した選抜モデルの効率は低下した。本研究の結果、遺伝子型情報を利用した選抜モデルの改良効果は表現型選抜に比較して大きな有利性を示さなかった。これは、この形質の比較的高い遺伝率に起因していると考えられた。
  • 村田 修治郎, 河邊 弘太郎, 田浦 悟, 下桐 猛, 川本 康博, 岡本 新
    2013 年 56 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    肉用鶏は,増体および肉質の向上をその主要な改良目標としている.ところが,従来の筋肉量を中 心とした増体の改良を行うと,それに伴って,腹腔内脂肪も増加させてしまうことが問題視されている.鳥類の脱共役タンパク質(UCP3)は脂質代謝に影響を及ぼすことが知られている.本研究ではニワトリUCP3遺伝子において既に増体および腹腔内脂肪量との関連が報告されている一塩基多型(SNP)である1270番目のCからTへの変異(g.1270C>T)ならびに1316番目のTからCへの変異(g.1316T>C)について,11カ国のアジア在来鶏ならびに4品種の改良鶏のディプロタイプを検出し,ハプロタイプ頻度の分布を明らかした. PCR-制限酵素切断片長多型法によって7種類のディプロタイプが観察された.全体としてハプロタイプ頻度は 0.66(CT),0.27(CC),0.02(TT)および0.05(TC)であった.本研究の結果から,ニワトリUCP3遺伝子の2箇所のSNPから構成されるハプロタイプはその頻度には偏りがあるものの,全てのハプロタイプが在来鶏のみならず一部の改良種にも残っており,今後の肉用鶏の選抜への利用について検討する価値があるものと思われた.
  • 平山 琢二, 北内 毅, 眞榮田 知美, 藤原 望, 平川 守彦, 及川 卓郎
    2013 年 56 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本試験では,食味試験に関して予備知識ならびに特に訓練を受けていない男性および女性を含めた 一般消費者を対象に,一般的な肥育期間で飼養された和牛,長期肥育で飼養された和牛さらにホルスタイン牛の脂肪交雑の極めて少ないランプ部位の赤身肉を供試肉として,官能試験を実施し実際の牛肉の赤身肉の美味しさに対する評価について検討した.供試牛肉の食感は,男女間で有意な差はなく,男女ともに柔らかさ,弾力およびあぶらっこさの3項目において,一般牛肉(ホルスタイン)<通常牛肉<長期牛肉の順に有意に良いと評価された.一方,供試牛肉の多汁性について,男性では一般牛肉<通常牛肉<長期牛肉の順に有意に良いと評価したのに対し,女性の場合,いずれの牛肉間でも有意な差は認められなかった.供試牛肉の食味および総合評価では,男女間で有意な差はなく,男女ともに全ての項目において,一般牛肉<通常牛肉<長期牛肉の順に有意に良いと評価された.供試牛肉の食感,食味および総合評価の年代差について,いずれの項目においても,年代間の有意な差は認められなかったものの,若者に比べ成人が牛肉間の評価差が明確であった.本試験において,牛肉の赤身肉の美味しさに関する感じ方は,多汁性には男女間差があったものの,ほぼ同様に判別し,長期肥育した和牛肉をもっとも美味しいと評価した.また,年齢層において牛肉の美味しさに関する感じ方に大きな差は認められず,長期肥育した和牛肉をもっとも美味しいと評価した.
原著論文(短報論文)
  • 仁木 博, 渡邉 慶太, 椛田 聖孝, 米田 一成, 松窪 啓介, 家入 誠二, 荒木 朋洋, 芝田 猛
    2013 年 56 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,イグサ粉末を添加した飼料の給与が, ブロイラーの成長,産肉性および脂肪蓄積に及 ぼす影響について検討した.5%イグサ粉末添加区(以下イグサ粉末区)の体重は,対照区に比較して有意に低い値を示した(P<0.01).しかし,飼料要求率は両区ともほぼ同様な値であった.胸筋および外側腸脛骨筋・寛骨臼後部の重量に有意差は認められなかった.一方,腹腔内脂肪重量は実測値および剥皮体重比(相対値)とも対照区に比べイグサ粉末区は有意に低い値を示した(P<0.05).しかし,脂質代謝に関する血中の各種成分の濃度は両区間に有意な差は認められなかった.以上のことから,ブロイラーに対してイグサ粉末を5%添加した飼料を給与すると脂肪蓄積は抑制的に影響されることが明らかとなった.しかし,体重増加も抑制されることから,イグサ粉末の添加割合やCP摂取量についてはさらに検討の必要があると思われた.
原著論文(技術報告)
  • 中村 好徳, 金子 真, 林 義朗, 莟 博行, 山田 明央
    2013 年 56 巻 1 号 p. 79-96
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2013/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    約9~10ヵ月齢の褐毛和種去勢雄牛3頭と黒毛和種去勢雄牛2頭を用いて,周年放牧に補助飼料とし てトウモロコシサイレージと麦焼酎粕濃縮液を併給する方法(配合飼料無給与)により飼養し産肉性と肉質を調査した.周年放牧に要した面積(4牧区の合計)は38 a/頭であり,平均1日増体量は0.75 kg/頭/日(褐毛和種)と0.62 kg/頭/日(黒毛和種)であった.供試牛は25.3ヵ月齢(褐毛和種)と28.0ヵ月齢(黒毛和種)で平均体重697 kg(褐毛和種)と688 kg(黒毛和種)で出荷された.胸最長筋と半腱様筋の肉質について調べたところ,褐毛和種は黒毛和種に比べて遊離アミノ酸(アルギニン)含量,脂肪融点と飽和脂肪酸割合が高い傾向にあったが,食感や色調などの調理特性に関わる項目は同程度であり,分析型パネリストを用いた官能評価では,特に筋肉の赤色度で品種内と品種間において有意差が見られた.
研究紹介
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