水資源・環境研究
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特集論説
企業リスクマネジメント論から見た原発事故由来処理水の海洋放出に関する報道(2021年4月-2022年3月)について
亀井 克之
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2022 年 35 巻 1 号 p. 24-31

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抄録
水資源・環境問題は、企業に対してさまざまな「リスクと機会」を提供している。2023年春に開始予定の福島原子力発電所事故由来の汚染水に処理を施した水の海洋放出(以下、「原発事故由来処理水の海洋放出」)は、近年、世界的に標榜されている「SDGs(持続可能な開発目標)」や「ESG(環境・社会・ガバナンス)」に大きく影響を及ぼすリスク事象である。水資源・環境問題と日本の企業・ビジネスを考える上で、避けて通ることはできない事象である。本稿では、まず第一に、企業リスクマネジメント論の枠組みで「原発事故由来処理水の海洋放出」を位置付けた後、第二に実施を1年後に控えた2022年3月段階までの新聞報道を提示する。  現実に海洋放出が開始されるにあたり、廃炉の行程や汚染水の処理というハードコントロールに加えて、風評リスクに関わるリスクコミュニケーションというソフトコントロールがきわめて重要となる事象であることが認識できる。安全のコストに関わる判断(津波対策の不徹底)や、事故処理のコストに関わる判断(凍土壁の採用)が、結果として長期的に膨大な環境コストを必要とする事態を招いたと言えるのではないか。
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© 2022 水資源・環境学会
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