水資源・環境研究
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35 巻, 1 号
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特集 水資源・環境問題と 日本の企業・ビジネス
特集にあたって
特集論説
  • 国際ジャーナルの文献レビュー
    大森 明
    2022 年 35 巻 1 号 p. 2-14
    発行日: 2022/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー
    本稿は、水をめぐる会計の研究動向についてその特徴を整理し、今後の研究の方向性を明らかにすることを目的としている。系統的レビューと記述的レビューを組み合わせて研究を行った結果、系統的レビューからは、会計学分野から直接アプローチされている研究は、水管理や環境科学の領域に比べてまだその草創期にあることが明らかになるとともに、クラスター分析から研究の焦点が水資源管理、環境問題、水情報および流域対象の水会計という4領域に及んでいることが明らかになった。また、文献を絞り込んだ記述的レビューからは、測定尺度、国際的水会計ツールの選択、バウンダリーおよび学際性による異分野協働という4つの論点の存在が明らかになった。これらの論点については順に貨幣情報、各ツールの収斂や役割分担、流域レベルとサプライチェーンとの関係、そして異分野協働による研究について、研究を展開していくことが必要である。
  • 岡 照二
    2022 年 35 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2022/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー
    本稿は、持続可能な社会における日本企業の環境経営について、会計学の視角から規範的研究を中心に考察した。まず、環境省による『環境会計ガイドライン』の内容・導入状況を確認し、環境会計の現在地を明らかにした。また、環境会計からサステナビリティ会計への展開について、環境会計研究の第一人者である山上達人教授の見解から、筆者らによるサステナビリティ会計の意義を検討した。つぎに、サステナビリティ会計の中でも自然資本に注目した。欧州・日本の自然資本に関する研究を考察し、特に『自然資本プロトコル』の内容・事例を紹介した。さらに、近年注目されているTCFDおよびTNFDによるリスクと機会に関するフレームワークについても言及した。最後に、現在、日本企業はTCFD賛同、CDP評価、自己表明型統合報告書発行、SDGs表明などサステナビリティに関するレポーティングが中心になっているが、マネジメント・コントロールについても効果的に実施しなければならない。
  • 亀井 克之
    2022 年 35 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 2022/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー
    水資源・環境問題は、企業に対してさまざまな「リスクと機会」を提供している。2023年春に開始予定の福島原子力発電所事故由来の汚染水に処理を施した水の海洋放出(以下、「原発事故由来処理水の海洋放出」)は、近年、世界的に標榜されている「SDGs(持続可能な開発目標)」や「ESG(環境・社会・ガバナンス)」に大きく影響を及ぼすリスク事象である。水資源・環境問題と日本の企業・ビジネスを考える上で、避けて通ることはできない事象である。本稿では、まず第一に、企業リスクマネジメント論の枠組みで「原発事故由来処理水の海洋放出」を位置付けた後、第二に実施を1年後に控えた2022年3月段階までの新聞報道を提示する。  現実に海洋放出が開始されるにあたり、廃炉の行程や汚染水の処理というハードコントロールに加えて、風評リスクに関わるリスクコミュニケーションというソフトコントロールがきわめて重要となる事象であることが認識できる。安全のコストに関わる判断(津波対策の不徹底)や、事故処理のコストに関わる判断(凍土壁の採用)が、結果として長期的に膨大な環境コストを必要とする事態を招いたと言えるのではないか。
  • 石坂 元一
    2022 年 35 巻 1 号 p. 32-41
    発行日: 2022/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー
    近年、地震や風水災が多発し、そのたびに企業も対応に追われている。増大する自然災害リスクに直面しながら、企業は今後どのような意思決定を下していけばよいのだろうか。本稿では、その一助として災害リスクマネジメントの理論と実態を概説する。まず、対象を災害に限定せずに、リスクマネジメントの目的、プロセス、手法及び組織体制を紹介する。その上で、適宜実態を交えながら、自然災害とくに水災に対するリスクマネジメントとその手法を整理する。最後に今後の課題をいくつか考察する。
論説
  • Adjusted Malmquist Indexの適用
    野田 浩二
    2022 年 35 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 2022/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル フリー
    工業用水道事業は、都市部の地盤沈下の抑制に貢献してきた。しかし、オイル・ショックや人口減少、低成長による需要減といった社会経済環境の変化は、工業用水道事業の経営環境に大きな影響を与えている。さらに、老朽化による設備更新時期を迎えていることもあり、工業用水道事業の改革が求められている。そこで本稿では、水道事業の生産性分析の既存研究を参照しながら、1999年度から2018年度までの20年間の87工業用水道事業者の生産性の変化を分析する。そのために本稿は、包絡分析法のひとつであるslack-based measurementを使い、推計された最初期の生産性数値とその後の累積的な生産性変化指数を掛けたadjusted Malmquist indexを算出する。各工業用水道事業者の最初期の数値と最終期の数値を比較することで、自身の生産性が改善したかどうかを明らかにする。それと同時に、最終期の数値を事業者間で比較することで、最終的な生産性の相対的な事業者間の優劣も明らかにする。
水環境フォーラム
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