2026 年 72 巻 2 号 p. 58-72
釘接合部の性能は通常,ヨーロッパ型降伏理論式により推定されるが,ばらつきが大きく,下限値や安全率の設定が重要である。釘接合部の性能を,分布を含めて推定できればより理論的な設計体系の確立に資すると考えられる。本報では,材料の性能分布に基づき計算した面材釘接合部の降伏耐力の推定分布が実験結果をどの程度再現できるか検証した。供試材の支圧試験及び釘の曲げ試験を実施し,得られた支圧強度等の分布形から接合部の降伏耐力の推定分布を算出した。推定分布と実験値の分布から計算した下限値や,分布形自体を比較した。推定された下限値は降伏耐力評価法や計算方法によっては,安全側の値を示した。またヨーロッパ型降伏理論式の仮定が成立する仕様であれば,推定分布と実験分布の形は高い適合性を示した。本研究の成果は,木造建築物の性能のばらつきを材料レベルのばらつきから予測できる設計体系の構築に資するものである。