2024 年 21 巻 p. 121-139
本稿は,後期近代における個人化と連帯のはざまに位置づけられる人びとの営みを把握していくための視点として,副田義也氏の「生活構造論」にいかなる可能性があるのかを検討する.その際,2000 年代以降に登場した新たなライフスタイルを視野に入れながら,氏の「生活構造論」の現代的な可能性を指摘する.具体的には,日本の都市社会学研究を概観しながら,高齢期における「未来の植民地化」の実践である「終活」を具体例にとりあげる.そこでは,ライフスタイルが強制されていくライフ・ポリティクスの側面を分析する可能性をもつものとして氏の「生活構造論」を位置づける. そのうえで,主体的に自らの生活を基礎づけ,未来に向けて生活を安定化させようとする欲求を把握するため,「生活設計」および「生涯設計」という視点を考察する.最終的に,高齢期におけるライフスタイルの追求以外にも氏の「生活構造論」を援用することが可能であることを提示していく.加えて,後期近代を生きる人びとが,生活・福祉・文化にかかわる問題群をいかに処理しているのかを映し出すものとして氏の「生活構造論」という視点を位置づけ,われわれが副田義也氏の社会学的功績から後世に引き継ぐべき事柄は何か,試論的に展開していくこととしたい.