本稿では,地域共生社会が政策目標とされ公私のアクター間の協働が要請されているなか,住民主体で公私協働の体制を構築し地域の問題発見・解決の取り組みを実践している団体に焦点をあて,住民主体の公私協働を構築してきた住民リーダーの主体形成のプロセスを確認し,住民リーダーはどのような考えをもって活動を展開してきたのかを検討した. 住民リーダーは,スタッフに対して気遣いやねぎらいの言葉をかけ,計画立案の際には,スタッフに主体性を促し,起案を後押ししてコミュニティでやりがいを感じてもらうよう尽力していた.とりわけ,その人のアイディアによる成功であることを明確にアピールすることが重要だという認識が示されている. さらに問題発見・解決という明確なビジョンを団体で共有したことが公私協働を後押しした。もう一人の住民リーダーは,住民の声を代弁するうえで大きな役割を担っていた.職歴において備えてきた具体的な知識や経験値は,住民活動を展開するにおける後押しとなっている.また,弱い立場にある人の声を拾い上げることにも貢献していた。当該団体が参画している公的事業,さまざま展開されている自主活動,そして社会的弱者の声を代弁することのいずれも,地域の課題発見・解決につながっている.このようなリーダーの存在が公私協働の実現の一端を担っていた.